未熟者。

『オレ、アイツ嫌いなんだよな……』

 

アイツとは社会人のチームで何度か対戦した事があった

 

口が悪い印象

審判にも噛み付いてたし…

 

 

まあ

おそらくむこうも

オレの印象は良くないだろうが…(笑)

 

 

 

 

 

 

ひょんなことから助っ人で出た試合。

同じチームにそんなアイツがいる…

 

まあ、

痩せたいだけだし…

サッカーはサッカーだし…

 

 

オレの方が上手いし。

 

とか、思いながら試合に出る。

 

 

 

意外に器用にワンタッチでボールさばくアイツ。

 

『そういえば、そんなプレースタイルだったな…』

と、思い出す。

 

 

前半15分くらいたったところで

サイドでパスを受けるオレ。

 

ボール受けに寄って来るアイツ

もう、ある程度アイツのプレースタイルは知っている

 

『これ渡すともどってくるな…』

 

 と考え、挨拶がてらにパスを出して敵をすり抜けもう一度受けに走ってみる

 

 

 

これ以上ないドンピシャのタイミングで自分のところに戻ってくるボール。

 

 

そのあと

自分では鋭いラストパスをイメージしていた。

 

あまりの良いパスにビックリした事を言い訳にするつもりは毛頭ないが

普通に失敗する…

 

 

 

 

 

確実に自分のミス。

 

『すんません。ナイスボールです…』

 と、アイツに会話でのファーストコンタクトを取る

 

 

手をあげて、笑顔でうなづくアイツ。

 

試合は 0−0 のまま後半へ

 

後半また逆サイドではあるけど

また同じような場面に。

 

 

 

さっきと同じように受けに来るアイツ

さっきと同じようにボールを出すオレ

 

さっきと同じイメージでディフェンスを突破するボール

その後、自分にセンタリングからゴールが決まる

 

 

『ナイスシュート!』のあとに

『ナイスボール!』の声が私にかかる

 

 

『いや、そのボールが出せるのは、その前のボールが良いからなんだよね…』

と、思いながらアイツの方を見る。

 

 

私の方に親指を立てて

笑顔で私を労うアイツ。

 

 

私はアイツを指差しながら駆け寄り、

腰の下ぐらいで軽くタッチをした。

 

 

おそらく、

私も笑顔だったに違いない

 

 

 

 

 

 

 

 

何年か前に社会人の試合で

審判が試合時間を間違えた上に

試合をおとした事があった。

 

しかも2週連続…

 

ひとつは5分長く行い、その5分で同点にされ…

もうひとつは5分短く終わって、負けていた。

 

 

 

 その事をうまく消化できなかった自分は

当時、国際審判であった叔父に

『ルール上はどうなるのか…』を聞いてみたことがあった。

その大半は不満を消化するためであったが…

 

答えはシンプルなものであった。

 

『審判が時間を間違えた時のルールなんてない…』

 

納得である。

 

 

 

そして、

さらに納得できる言葉を

こう付け加えた

 

 

 

『みんな、サッカー好きで集まってやってんだろ…?』

『いいじゃねえか!そんなの…』

 

 

一見

居酒屋で飲んでるそんじょそこらのオッサンが言いそうなセリフだが

ルールを極めた国際に審判に言われると、ぜんぜん重みが違う。

 

今でも大切にしている言葉である。

 

 

 

 

 

 

 

 オレが嫌いだったアイツ。

きっと、アイツもサッカーが好きだ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ほんと俺は未熟者。